複雑で一筋縄ではいかない高次脳機能障害の評価やスクリーニングにおいて、必要な知識や考え方をまとめてみたいと思います。
仕事にも慣れてきたようですね。何か困りごとはないかな?
高次脳機能障害をどのように捉えていいか、まだ曖昧です・・・。
では、今回は評価やスクリーニングに必要な知識や考え方をみていきましょうか。
高次脳機能障害とは
高次脳機能障害は、何らかの脳の損傷によって生じる言語・思考・記憶・行為・学習・注意などの障害。
中枢神経系の中で、これらの高次脳機能に関わる脳部位は広範にわたり、重さでは約8割とも言われている。
そのため、脳に損傷が起こると何らかの高次脳機能障害が発生する割合が高くなると考えられる。
高次脳機能障害はリハビリテーションで治療を行う対象であるとともに、運動機能訓練などの治療における阻害因子となります。そのため、評価に基づく対応の方略をいち早く確立する必要があります。
評価・スクリーニングをおこなう前に
①神経心理ピラミッド
米国ニューヨーク大学 Rusk 研究所では、脳損傷による高次脳機能障害を神経心理ピラミッドと呼ばれる概念図で表している。これはRusk 研究所の長年の臨床経験を合わせて作られてきた仮説となっており、現在も改訂が続けられています。
この捉え方は、高次脳機能障害を理解しリハビリテーション治療を行っていく上で、非常に参考となります。
神経心理ピラミッドから階層性を確認しておこう!
2008年9月より改訂されたバージョンですね。
このピラミッドが示しているのは、認知機能の働き方の順番です。
下層にある機能は認知の働きの基礎となり、その上にある機能に影響を及ぼしています。つまり、下層が担保されていないと上層は成り立たないことがわかります。
現状実施している訓練や関わりにおいて「どうも、うまくいってないな…」、「難易度が高いのかな?」と感じる場合には、神経心理ピラミッドを鑑みながら、下層の状態を再検証して、課題を設定しなおしてもいいかも知れません。
そうすると、遂行機能障害に対するアプローチの前に、記憶や注意の状態を評価する必要がありそうですね。
②病巣部位
脳の器質的損傷で起こる神経学的症候である高次脳機能障害では、損傷部位と症状がおおよそ対応している。
下の高次脳機能の見取図で大まかな場所を把握しておこう。
症状は病巣部位と少なからず関係しているので、脳画像で損傷部位を確認できるなら、症状を予測できて評価の精度も上がりますね。
前頭葉は神経心理ピラミッドでいう低位の注意機能と、高次である遂行機能を担っていて、なんだか複雑そうですね。
前頭葉は、注意機能・ワーキングメモリ・遂行機能などとも深く関わっているので重要な部位ですね。 また改めて確認することにしましょう。
中心溝より前方が出力、後方が入力。
左半球が記号的・時間的処理・論理的、右半球が統合的・空間的処理。
腹側が情報の意味付け(内向け)、背側が情報を運動へ(外向け)。
進化的に内側が古く、外側が新しい。
これら4軸の組み合わせにより各部位の機能を理解していきましょう。
脳は絶妙なバランスで働いているので、そのバランスが崩れると様々な症状を発生します。
4つの対関係で脳機能をとらえると、損傷している対側の働きが相対的に強く表れる場合があるなど、包括的に脳機能の変化をとらえやすくなるのではないかと思われます。
神経心理ピラミッドと病巣部位をふまえて、いよいよ評価・観察に移っていきましょう。
患者さんに協力してもらわないといけないから、十分なラポールをとってやってみます!
脳を損傷した方は非常に疲れやすい面があるので、疲労感にも注意しながら進めないといけませんね。
まとめ
今回は、高次脳機能障害のスクリーニングや評価を行う前の、知識や考え方を整理してみました。
- 神経心理ピラミッドから認知機能の階層性を確認。
- できるだけ画像などで病巣部位を確認し、症状をおおまかに捉えておく。
次回は実際のスクリーニングをまとめていこうと思います。
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