注意障害って、試験の時にも覚えたけど、難しくてピンとこなかったよ。
集中できないとか、気づいてもらえないとか、そういう漠然とした感じで覚えた記憶があるよ。
では、『注意障害があります』、『注意障害はみられません』などとよく見かける注意障害・注意機能をもう一度見直してみましょうか。
認知過程の根幹となる注意機能を、もう一度見直すことで、他の高次脳機能をより理解できる材料となるのではないかと思います。
『注意とは何ぞや⁉』の理解の呼び水となるように見直していきましょう。
集中と警戒
注意には「周りに注意を払う」と言うような「警戒心」のような要素もありますが、いわゆる「集中力」といわれるような、明らかに警戒心は違う要素があることは実感できるのではないでしょうか。
この「集中」と「警戒」が一番実感できるのが、「カクテルパーティ効果」です。
パーティの会場はガヤガヤとしていますが、目の前の人との会話が盛り上がったら、周りの音や気配に気づかなくなるでしょう。
対象に注意を向けるだけでなく、同時にそれ以外の周りへの”警戒をやめる”ことが「集中」には必要となる。
もう一つ言えることは、ガヤガヤとしていて周りの音がよく聞き取れなくても、自分の名前を呼ばれたりすると気づくことができる。(地獄耳!?)
つまり、何かに集中している時も、それ以外への警戒は完全にOFFにはならない。
まず押さえておきたいことは・・・
- 注意は「警戒」と「集中」で捉える。
- 「警戒」と「集中」はトレードオフの関係である。
- トレードオフ関係ではあるが、「警戒」は完全にはOFFにならない。
『注意』という資源を「警戒」と「集中」で分けあっているイメージですね。
なるほど!
言われてみると、その通りな感じがします。
なるほど!カクテルパーティー効果かぁ。
でも、試験で覚えたのは「選択性」やら「持続性」「転導性」「分配性」という分け方だったような気がしますが・・・。
では次は、それらにまつわる話をしていきましょうか
注意の三要素
よく例えられますが、
注意を向けることをスポットライトに見立てて考えてみましょう。
注意を集中させている範囲(明るいところ)の周辺(少し暗いところ)も無意識に警戒している
なんか動いてる!
意識にのぼらない周辺注意内でも変化があれば気づける。
場合により注意の焦点が気づいた方へ移動する。
図ではライトが集まっている周りは薄明りのようになってますね、
その薄明りの中でも動きがあれば、そちらに焦点をすぐ切り替えられるようになっています。
ここで注意機能を、Sohlberg ら(1989,1993)の分類【「選択性」「持続性」「転導性」「分配性」】と照明のイメージを合わせていくと・・・
注意の三要素
Sohlberg の分類 照明のイメージ
・強さ(覚醒度・強度) ・光の強さ
・焦点(集中・分散) ・(持続性・転導性) ・絞りの開閉
・選択(選択・分配) ・(選択性・分配性) ・位置調整
絞りの能力が強くて電力も強いなら集中力が高い
広い範囲を照らしていてすぐ焦点を切り替えられるなら隙がない 等のイメージ
ある場所を、強さを調節しながら、広く照らしたりスポットライトのように狭い範囲を照らしたりするイメージですね。
テキストで覚えた注意機能の分類との関係性がわかりました。
では次に、その三要素のうち、どこが悪くなっているのか区別できるかを見ていきましょうか。
注意強度↓をイメージすると
なんだか全体的に暗いですね
全体的に暗い(注意の強度が低い)と変化に気づきにくくなりますね。
他には
絞り↓と位置調整↓のイメージ(切り替えが悪い)
目標に向かって焦点を絞ることができない。(動いているものに注意が向かない)
問題要素の組み合わせで色々なケースが考えられますが、何らかの要素の働きが悪いと概ね、「全要素が低下していると考えて対応する」と捉えるのが現実的でしょう。
さらに、注意の強さが落ちているケースは、集中力や警戒心、切り替えも低下する。
注意の強さは覚醒の度合いと直結するから、眠くなれば全要素が低下する。
意識障害や覚醒度に差がある人は強度の低下は必発となるでしょう。
注意の強さに問題がある人は、すぐ疲れるとか、眠そうなことが多いとか、ぼーっとしているように見える等が特徴となる。
ただ逆は真ならずで、易疲労性があるからといって注意の問題があるとは限らない。たとえば肝臓など内臓系が悪くてもそうなる場合もある。
う~ん、『どこに集中するか』、とか『周りに注意を払うか』などはケースバイケースで、注意というより判断の問題のような気がしますが・・。
なにが違うのかな??
左の図を例にすると、
「この場面で、この注意の払い方は間違っている」という判断はもっと高い次元の認知機能であり、我慢させる(制御)機能も切り替えには関わってくる。
この場合の注意の切り替えは注意の問題なのか、他の認知機能の問題なのか見極めるのは不可能となります。
注意の強度の問題が体調と区別できないように、絞りの開閉や位置調整においても他の認知機能の問題と区別するのは非常に難しいですね。
「判断」も「制御」も注意より高い次元の認知機能であるため、注意の切り替えも問題にはヒト独自の連合野が大きく関わってきます。
舞台照明を例にして説明してきましたが、照明器具(注意)自体の問題というよりも、それを扱う照明係(連合野)の問題である場合もあります。
よって、注意の問題といっても、「注意」そのものの問題である場合と、より高い次元の「連合野」の問題の場合の両方があり得るということとなります。
舞台を見ていて、照明器具の故障か、照明係さんの腕なのかは、わかりませんもんね。
舞台が暗いのはわかるけど、それが電力不足なのか、それとも明るくする操作ができてないのか…わからないよね。
なんとなくイメージがつきましたか?
注意機能はその他の認知機能(高次脳機能)と切り離して考えるのではなく、相互作用を考えないといけないと思います。
それだけではなく、体調や環境との関係も含め、包括的に捉えないといけない機能ですね。
まとめ
- 注意は「警戒」と「集中」があり、双方はトレードオフの関係である。
- 注意を三要素で捉える。
- 強度の問題は体調と区別できない。
- 焦点・選択(切り替え)の問題は、他の認知機能の問題と区別できない。
- 注意の問題は注意機能以外にも大きく影響されるので、高次脳機能や認知機能と包括して判断、評価が必要。
注意機能についてより深く理解ができるオススメの書籍です。